うなぎをもっと楽しむコラム
新たな浜名湖うなぎの未来をひらく「でしこ」
2026.05.14 | コラム

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養鰻家・高橋さんに伺う、品質への挑戦
浜名湖うなぎの新たな価値として注目を集める「でしこ」。
今回は、浜名湖でいち早く大豆イソフラボンを使った養殖に取り組んできた養鰻家・高橋さんに、その歩みと思いを伺いました。

「誰もやっていないなら、やってみよう」から始まった挑戦

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井口
高橋さんが大豆イソフラボンを使った養殖を始めて、もう5年ほどになりますよね。浜名湖の中でもかなり早い時期から取り組まれていたと伺っています。

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高橋さん
そうですね。弊社ともう1軒が、最初に始めたほうだったと思います。

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井口
当時は、まだ多くの方が取り組んでいない中で、なぜ始めてみようと思われたのでしょうか。

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高橋さん
一番大きかったのは、「誰もやっていなかったから、やってみよう」と思ったことです。もともと浜名湖産うなぎは希少性がありましたが、それは生産量が少ないことによる価値でもありました。これから先を考えると、量では他産地に勝てません。だからこそ、品質にこだわった浜名湖うなぎをつくらなければいけない、という思いが以前からありました。
“量”ではなく“品質”で選ばれる浜名湖うなぎへ

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井口
そこで出会ったのが、大豆イソフラボンを使った養殖方法だったのですね。

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高橋さん
そうです。エサに大豆イソフラボンを与えることで、身や皮がやわらかく、ふっくらとした良質なうなぎになるという話がありました。理論としては期待がありましたが、実際の池でやってみると、試験場のように簡単にはいかないことも多かったです。

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井口
現場で試すからこそ見えてくる難しさがありますよね。

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高橋さん
そうですね。でも実際に1年育ててみると、品質は確かに変わったと感じました。これは今までの品質を超える、新しい浜名湖のブランドになる。そう思えたので、コストがかかっても続ける価値があると考えました。
広がっていった「でしこ」の輪

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井口
最初は一部の池での取り組みだったものが、今では浜名湖全体に広がってきていますね。

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高橋さん
最初は試験的な段階でしたが、2年目には10軒ほど、今では20軒ほどがこの養殖に取り組んでいます。浜名湖での広がり方は本当に早かったと思います。

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井口
そして、その積み重ねの先に「でしこ」というブランドが生まれました。クラウドファンディングで大きな支持を集め、グッドデザイン賞も受賞し、全国で扱うお店も増えています。

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高橋さん
正直、夢のような話です。でもそれは、生産者だけではなく、組合、地域の皆さん、関わる方々の力が重なって実現したことだと思っています。
顔が見えるうなぎが生む安心感

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井口
私たち専門店の立場から見ても、このブランドが生まれた意義はとても大きいと感じています。以前から、「浜松から贈るなら、浜名湖産のうなぎを送りたい」というお客様のお声は多くありました。そこに品質の高さと物語性が加わったことで、より自信を持っておすすめできるようになりました。

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高橋さん
ありがとうございます。浜名湖の場合は養鰻家の数が限られているからこそ、顔が見える形で伝えやすい面もあります。作り手の顔が見えると、お客様にも安心していただけると思いますし、私たち自身も責任を持って育てようという気持ちが強くなります。

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井口
まさにそこが、でしこの大きな価値ですね。どの養鰻家さんが育てたのかがわかることは、安心感だけでなく、おいしさの背景にある努力や思いまで伝えられるということでもあります。
おいしさとともに、思いを届けるために

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井口
当店では、この浜名湖産のうなぎを、ストーリー性のある蒲焼のたれで焼き上げ、店独自の価値としてお届けしていきたいと考えています。顔が見える品質、受け継がれる技術、そして養鰻家さんの思いまで含めて、お客様へ丁寧にお伝えしていきたいです。

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高橋さん
そう言っていただけるのは本当にうれしいです。課題はこれからもあると思いますが、一つひとつ乗り越えながら経験と知見を積み重ねていくことが、技術になり、ブランドになっていくと信じています。これからも挑戦を続けていきたいです。

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井口
養殖する人がいて、それを届ける私たちがいて、そして楽しみに待ってくださるお客様がいる。浜名湖うなぎの新たな未来は、そうしたつながりの中から育っていくのだと、あらためて感じました。

この記事は私が書きました
井口 恵丞(いぐち けいすけ)
有限会社うなぎの井口 代表取締役
昭和63年創業、うなぎの白焼のみを販売する「井口うなぎ白焼直売」の2代目として平成8年に後を継ぐ。
以降、法人化、蒲焼やうなぎ関連商品の開発と販売、ビジネスコンテストや店舗の改善で受賞。国際的な味覚の審査機関、「国際味覚審査機構」でうなぎで初めて「優秀味覚賞」を受賞。
毎日うなぎをさばき、うなぎの良し悪しを確認することがを日課としています。







